等身大の青春は眩しい魔法 ー魔法が使えたみたいだった/にゃんぞぬデシ

にゃんぞぬデシの新譜「魔法が使えたみたいだった」が最高だったから、レビューがてらご紹介まで。

 

魔法が使えたみたいだった

魔法が使えたみたいだった

 

 

 

 

にゃんぞぬデシというアーティストがいるんだけど、みんな知ってるだろうか?

多分ほとんどの人は知らないと思う新人の女の子。まだ20歳にもなっていない現役女子大生。そんな彼女が17歳の時に出した1st EPが個人的に大好きだったから、ずっと追っかけているんだけど、新人故に情報は少ないし、デビューEPから音沙汰がなかった。一日千秋とはこのことを言うんだと強く実感したぼくはきっと にゃんぞぬデシ に恋してしまったんだと思う。

今回やっと久しぶりの大きな活動をしてくれてぼくは本当に彼女に感謝している。彼女の作る音楽は中毒性が高くて、ぼくは大好きだ。だからこそ、今回発売される新譜について発売直後にこういった記事を書いたわけなので、是非みんなも聴いてみてほしい。

 

 

1.同じ空の下どころか

リードトラックからもうにゃんぞぬデシらしさ全開。彼女の良さは自分のレンジがはっきりしていて、自分の作りたい歌・作れる歌を把握していることだと思う。今作もぼくらが好きになった彼女は依然としてそこに在り続けていて、ぼくらはその彼女の後ろ姿を追っかけることに幸福を覚える。

歌詞から曲調から何もかもがにゃんぞぬデシなんだよな。この曲を聴いて好きになってもらうことが出来たらきっとあなたはにゃぞぬデシの虜になることだろう。

わたしのことが好きな人が好きなの
エクセプションのあなたもいつか当てはまってよ
覚えたての言葉使ってみる
おろしたての服があなたに会いたがる

自分のことを好きな人が好き、というのはすごくよくわかるんだけど、今はそんな話を掘り下げる必要はないので割愛するとして、

学校で新しく習った言葉を使ってみる。それは今までの自分よりも大人になったような気分になれるから。大人になれば魅力的になれるのかな、と思いをはせたことがあった。自分がいつも見上げてきた大人たちと同じ年齢や立場になっても自分がその理想に等しくなった実感は一つも湧かなくて、少しでも背伸びをして大人になりたかった。

背伸びしているのは言葉選びだけじゃなくて、“おろしたての服”だって今までの自分の系統とは違う少し大人びた雰囲気の服を選んでみた。貴方に見てもらいたい、大人に近づいた私を。そういう気持ちが段々と自分を大人に身も心も近づけていくのだろう。

同じ空の下どころか同じ国どころか同じ県どころか
隣の隣の隣の町にあなたは住んでるのに
気持ちは気持ちは気持ちは 同じにならないの?
気持ちは気持ちは気持ちは 同じにできないのね!

表題に係ってくるサビだけど、この歌詞が眩し過ぎてつらい。

同じ空どころか~ってすごく近いようで、隣の隣の隣の町は意外と遠い。同じ空とあまり変わらない体感の遠さじゃないかって思うけど、当事者にとっては「こんなに近いのに!」という距離感で、それは若さゆえ以外の何物でもない。

この部分のメロディラインがすごく好き。突飛で自由な音が歌詞の世界観の青春と重なって輝きを放つ。

同じ星の上どころか同じ人間どころか
同じ時代どころか
隣の隣の隣の月で誕生日近いのに 

 3か月ズレた誕生日は近くないのに、近いと言い切ってしまうこの感じ、大好きだ。この恋が叶うかどうかはどうでもよくて、こういう感情が発生すること、それ自体に意味がある。青春ってそれだけで人を一回りも二回りも変えると思う。

 

2.am:pm

あなたにあいたいAM3時と
あの子になりたいPM3時 

 冒頭はこの歌詞から始まって、これが表題。夜は好きなあの人を想う。しかしながら、片思いのあの人には素敵な恋人がいて、その場所を代ってほしいと願う昼過ぎ。昼と夜で人は行動が全く違うけれど、それを歌詞にうまく落とし込んでいることに作詞のセンスを感じる。

 

この歌の歌詞は色々と考えることが出来て、夢という言葉を“将来への展望”としての夢と、“睡眠時の生理現象”としての夢をかけているのかなというのがぼくのこの曲のテーマ。

夢とは自分の想像力でのみ成り立っているものだから、きっとそれは自分に対する将来や理想と同義なんだろう。不安や期待、自分が抱えているものはすべて夢に現れる。

馬鹿にされぬように
「叶わぬ思い」と吐き捨てて
am:pm
本当の意味は
「いくつも叶えてみせるから」
am:pm
頑張ってみてよ
みるよ 

 最後はこう締められている。夢とは「叶わぬ思い」と言いながら「いくつも叶えてみせたいもの」。自分の理想とかを大きな声でいうのは恥ずかしいけど、内に秘めた思いを実現すべく頑張ってみる、そんな決意の歌だと思う。

 

3.ネゴト

この曲もまた夢を題材にしていて、前曲のアンサーソングというか、関連性を持たせているのかなと感じさせる。視点が違う同一時間軸と考えてみると彼女の頭の中を覗いているようで面白い。

昨日に「さよなら」と言って 今日に「はじめまして」
昨日と今日と明日を繋げて行こうできるだけ 

 彼女の曲は少しネガティヴな自意識が含まれているんだけど、そのすべてがしっかりと前を向いている。歌を通じて彼女が伝えたいことって何か、それを考えたときに等身大の自分や10代を歌うことに加えて、そんな同年代を勇気づけることができる歌を歌いたいのかなとも思う。好きな人と結ばれるなんて必ずあるわけじゃないし、夢を描くことは誰にだってあるけど、それが叶うかなんてはわからないけど、それでも叶えようと努力することや、前を向いて生きていく決意とか、そういう部分で彼女はいろんな人に夢を与えることが出来ている気がする。ぼくも彼女と夢で逢いたい。

 

4.全てお見通しよ

にゃんぞぬデシの歌詞のセンスを体感したいならこの曲がベストだと思う。詩的な彼女の世界観が随所にちりばめられている。どこかを切り取ることなく、通して聴いてほしい。

囁くように歌う彼女の声もはっきりと聞き取れるし、声域の広さと歌い方をしっかりわかっていて、経験値が溜まっていてそれこそ彼女が弾き語りとかを今までしてきたりしたことが糧になっているのかなとも思う。

Aメロのお湯が沸いたくだりは「へそで茶を沸かす」のことわざから転用しているのかな、なんて思ったり。

 

明日を生きていく勇気なんてない
明日も昨日もどこにもない
ただ今

 

明日を考える余裕も昨日を振り返る充実もない。ただ自分に纏わりつく現在があるだけ。思春期って本当にそう。未来を考えると漠然とした不安でいっぱいで、過去を振り返ってもそこに自信や満足感があったとしてもそれが仮初めのものかもしれないとまた不安になる。明日もこのまま続いていくのかと思うと、果てしなく鬱屈な気持ちになる。それでも今を生きていくしかないのはわかっている。だからこそ「全てお見通しよ」そう言ってほしい。我が儘だろうか、我が儘であることは若者の特権だとぼくは思う。

出逢えた意味が絶対あるんだ
ありがとう
くだらない話でもしよう
心に陽が灯るまで 

 出逢えた意味があるかどうかなんてわからないけど、あると信じたい。あるとして生きていきたい。誰かに出逢えたことで自分にとって何らかの影響があったように、自分も誰かにとってそんな存在になっていることを期待したい。そしてそれが、「ありがとう」といわれるような存在だったらうれしい。

 

5.スーパースター

スクランブル交差点を代名詞扱いして概念化していて二重の意味を持たしている。いろんな人があちらこちらから歩いてくる交差点のようなところに立たされているような気分になるモラトリアム人間。自分を照らしてくれるようなスーパースターが居たらそれで世界は一変して輝きだす。

取り残されたくもないけど
流されたくもないよ
自分の船は自分の舵で
漕いで行きたい

自分というものを自分でしっかり定めておきたい。「宙船/TOKIO」みたいな歌詞だけど、自分の決定権は常に自分で持つべきなのだと思う。この曲ではスーパースターという存在が登場するけど、主人公は自分の舵をスーパースターに委ねたりはしない。そこが彼女の芯の強さなんだろう。

 

6.魔法が使えたみたいだった

表題曲。ハッとさせられるフレーズが多くて好きな曲。歌いだしから惚れた。

「また明日ね」が「また今度ね」変身しなくていいのに
進化を止められない僕らだね しっかり前に進もう 

 いつも一緒にいた友達も月日が経てばそれぞれ自分の道を歩み始めて、会う頻度は必然的に下がる。そんな成長・進化なんかなくていいのに。このままこの時間が永遠に続けばいいのに。そんな風におもったことが皆、今まで一度くらいあったことだろう。

別にこれは思春期特有のものでもなんでもなくて、幼児においても毎日遊んでいた仲良しの子と急に遊ばなくなることがよくある。

片方が遊ぼうと思っても、もう片方はもうその子とは遊びたくなくなっている。これは嫌がらせとかイジメとかそういう類の話じゃなくて、単純に2人の周波数が合わなくなってしまったことが原因だという。仲良しになるということはお互い何かしら理由があるけど、片方の子が成長してしまって基準値がズレてしまったことに因る。こうなってしまうと、大人がいくら言い聞かせても今まで通りの関係に戻ることは難しい。これも一つの成長だから。

成長とは不可逆的な反応だ。「また明日ね」が「また今度ね」になってしまうことを憂いていつまでもそこにいるのではなく、進化(成長)と捉えて、前に進もうとする彼女の感覚に脱帽。

掃除ロッカーから取り出した箒にまたがって
君と空 どこまでだって飛べるような気がした
机の中 めいっぱいに教科書は閉じ込めて
君の笑顔の隙間に未来をかすめた

魔法にかかったような日々を途切れながら続けてゆこう
これからは君に会うたびに復活するのさ

青春は魔法のようだった。もうあの日々は帰ってこないけれど、君と過ごした日々が魔法だったように、これから君と会うときにはその魔法の感覚が戻ってくる。魔法は切れたかもしれないけど、無かったことにはならない。そういう関係の人がいるからこそ、魔法のような日々だったんだろう。「君の笑顔の隙間に未来をかすめた」ってフレーズすごく素敵で大好きです。

 

にゃんぞぬデシの2nd EPは彼女らしさが詰め込まれた意欲作だと思う。このEPで全国のタワレコインストアライブなんかも初めてやるらしいので、ぼくも最寄りのタワレコに行ってイベント参加券を貰ってサイン会に参加しようと思っている。1stで感じた彼女への期待を裏切らず、さらに昇華させた彼女の今後も変わらず注目していきたい。にゃんぞぬデシの良さが伝わればこれ幸い。イベント等で一緒になったらその時はよろしくお願いします。あ、ぼくが彼女の歌で一番好きなのはしろくま観覧車です。そちらもぜひ聴いてほしいです。(おしまい)

 

しろくま観覧車 (しろくま in the 南極)

しろくま観覧車 (しろくま in the 南極)

  • にゃんぞぬデシ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 

はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。

はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。